【心の灯火】
繁忙期に忙殺されているらしい君は、自宅に帰ってくるなりソファに座ってぼうっとし始める。何をするでもなく虚ろな瞳で壁を見つめている君の前に無言で紅茶を置き、その隣になるべく振動を与えないように慎重に腰掛けた。
早く寝たらとか、今日もお疲れ様とか、口にしたい言葉は山ほどあるけれど。その全てを呑み込んで、君の隣に寄り添い続ける。
私が辛い時、君がそうしてくれたのと同じように。側にある温もりが、消えそうになる心の灯火を優しく守り続けてくれることもあるのだと、私は君に教えられたから。
とんっと、君の頭が私の肩へと乗せられる。人に頼るのが苦手な君の、精一杯の甘え方。大丈夫だよ、そう告げる代わりに私はそっと君の肩を抱き寄せた。
9/2/2023, 11:13:38 PM