H₂O

Open App

最悪


「嫌いになってよ」
それは、すべてを受け入れた後に言われた言葉だった。
思わず無言でそちらを見つめれば、彼は少し悲しそうにして微笑んだ。
思い返せば、奪われるようなものばかりだった。告白の言葉も、初めて繋いだ手も、流れるようなキスも、すべて私から強引に奪っていくようなものばかりで。
あれもこれも全部、このためにやっていたのかと思うと、乾いた笑いしか出なかった。
ああ、彼の言うとおり嫌いになれたらよかったのに。それでもまだ、嫌いになれない自分がいて、呆れるようにため息をついた。
最悪だ、そう呟いた私の声に、彼は傷ついたようにうつむいた。

6/6/2023, 1:18:44 PM