『交わらなかった想い』
「何してるんだ!戻ってこい!!」
歩き出す私に彼の声が飛ぶ。彼がバリアを壊そうとしている音が響いた。
「そのバリアは壊れないよ。なんたって、この私が作ったんだから」
彼もそのことは理解してるはず。だから、壊そうとしても無駄なのに…。
手が傷ついてしまうからやめて欲しいと思うと同時に、必死に止めてくれてるのが嬉しく思ってしまった。…自分にはそんな資格ないのに。
目の前には、暴走している機械。これを止めるには誰かの命を捧げなければならない。なら、その役目を負うのは私で十分。
彼の方を振り返る。目が合った。
「私を許してくれてありがとう。優しくしてくれてありがとう。…仲間って言ってくれてありがとう。
大好きだったよ」
「な、何を言って…?」
彼の目は不安そうに揺れる。そんな彼に、自分が出来る最高の笑顔を向けた。
「あの子と幸せになってね!」
画面に手をかざすと、眩い光に包まれた。
ーー
そっと目を開ける。機械は暴走が止まったみたいで、先程までの五月蝿さが嘘みたいに静まり返っていた。その機械の前に彼女が倒れていた。俺は手の痛みを無視して急いで彼女に駆け寄る。あれだけ邪魔だったバリアはもう無かった。
彼女を抱きかかえて名前を呼ぶが、目を固く閉じたままピクリとも動かない。
「自分だけ言いたいことだけ言って…俺の話は聞いてくれないのか…?」
彼女の頬を撫でる。あれだけ体温が高かった彼女が冷たくなり始めていた。
「好きだ…愛してる。俺を置いていかないでくれ…」
彼女が、自分たちを裏切ったことを負い目に感じているのはよくわかっていたつもりだった。でも、こんなことするなんて思いもしなかった。
「起きてくれ、なぁ。
俺はあんたがいないと幸せになれない…!」
【幸せに】
4/1/2026, 5:51:40 AM