John Doe(短編小説)

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アンダーグラウンド


僕はおよそ千人の地底の調査団と共に、地中深くに眠る神秘の石を求めてエレベーターを降りていた。
ガイドもいて、僕はただ早く石を見たくてほとんどガイドの話を聞いていなかったが、注意だけはきちんと聞いた。というのも、エレベーターは地底のとある休憩所のエリアまで降りると次の後続隊のために自動で地上に昇り、再び地上へ戻るには別の通路を歩かなければならないというのだ。しかも、石を盗むような輩の罠として、いくつか分岐点があり、標識は全て嘘で、全て左の通路を通過するということ。それだけは忘れないように、と念をおされた。

エレベーターは到着し、僕らは広い空間に出た。まだここは休憩所のエリアで、そのさらに下へ降りていかなければ、石は見れないのだという。僕はそこで千人の団員たちと衣食住を共にし、次の出発を待っていたときだった。

先に出発した隊が引き返すよう指示を出したのである。どうも水や食糧が石がある場所まで到達するのにもたないらしい。僕は心底がっかりしたが、諦めて次の指示を待つ。すでに、百人くらいの団体が地上へ戻るためエレベーターとは別の通路へと歩みを進めていた。僕もそれに続こうとしたが、ガイドが「あなたはまだ残ってください」と言って、止められた。仕方なく、僕はこの広い空間の中で懐中電灯の灯りをぼんやりと見ていた。

いつの間にか僕は眠っていた。慌てて起きると、千人近くいた団員は僕を含めて十名ほどになっていた。恐らくこれがいちばん最後の隊だろう。僕は慌てて準備していると、懐中電灯のバッテリーを置いてきたことに気付き、仲間に待っていてくれるよう頼むと急いで戻った。

戻ってきてみると、誰もいない。

嫌な汗をかいた。僕はすぐに走って通路に入ったが、中は物音一つしない。誰かいないかと叫んだが、何も応答がなかった。僕はすごく嫌な予感がした。ひたすら走り、例の分岐点まで来た。もちろん、左側へと迷わず進んだが、通路はどんどん狭くなっている気がした。あれ? 間違っていないよな? 僕の心臓はあり得ないくらい激しく震えていた。

やっぱりおかしい。

僕は通路の行き止まりに着いていた。そこには穴が空いており、ロープが垂れ下がっていたのだ。だが、僕はそのロープを降りると、二度と戻って来れないんじゃないかという不安に駆られ、先ほどの分岐点へと引き返そうとした時だった。

チカッ。チカッ。チカッ。

満タンに充電して一週間はもつはずの懐中電灯が点滅し始めたのである。わけが分からず走ろうとすると、僕は思い切り転んだ。その衝撃で水と食糧が入った荷物を穴の中へ落とし、さらに懐中電灯もバッテリーが切れた。

辺りは漆黒の闇。僕はうつ伏せになった状態で痛む右足を引きずりながら、匍匐前進をする形で来た道を戻ろうとした。心臓は苦しいくらい暴れ、冷や汗が全身から流れ、今にも発狂しそうだった。

怖い。

こわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわい。

死にたくない。

このまま僕は死ぬ?

この暗い地中でたった一人で?

人間って水を飲まないと何日もつんだっけ?
確か五日間。
じゃあ五日間死ぬまでこのまま?

そうだ、気が狂えば、楽になるんじゃないか?
でも、恐ろしいほど、僕は冷静だった。
じわりじわりと、死の気配が近づくのを感じる。

僕は、未だに転んだまま顔を地面に伏せていた。
顔を上げれば、もう本当に気が狂うんじゃないかと思ったんだ。

耐えられない。
あと少ししたら、舌を噛み切ろうかと思う。

1/26/2024, 1:43:18 PM