題名『終止符』
『……、もう、終わりにしませんか、?』
咄嗟に口から、そんな言葉が出る。
違う。
本当は、終わらせたく無いんだ。
彼は、顔を上げて鳩に豆鉄砲を喰らった様な顔をした。
昨日迄の、俺とはきっと真逆の俺なのだから。
『な、何故ッ…、?』
『理由なんて無いさ。そう、理由なんて…、』
彼奴の事を思い出すと、目から透明の塩水が流れ出てくる。あの時の海水が目の中に入っていたみたいに。
『さっさと消えてくれ、!!!顔ももう見たくなんか無いんだ、!!!』
『何でだよ、!!!なぁ、!!!』
彼が一括、二括と怒鳴り入れてくる。
知らない。御前の事なんて、見たくも、聞きたくもない。全て御前のせいだ。
『何でだよ、!!!父さんッ、!!!』
『俺は御前の父親じゃ無い。とっとと、出て行け、!!!俺の一人息子を殺したのは、御前だろうが、!!!』
『だから、!!!その、息子が俺だって、!!!』
『ふざけんのもいい加減にせぇ、!!』
『分かったよ、!!!じゃあ、これからもう来ないからッ…、!!!』
そう言い、彼は出て行った。
数年前、俺と息子が船に乗った時。
船長達の不注意で、船が沈んでしまった。
俺は、何とか気が付くと病院に居たけれど、息子の姿が無かった。
もう、息子の姿が思い出せない時に『息子だ、』と名乗る奴が家に来た。
何度も、何度も、嘘だと思った。
だから、何度も、何度も、セールスの様に帰らせた。
彼奴の後ろ姿は、息子に似ていた。
でも、もう、遅い。
俺から、終止符を打ったのだから。
2023.7.16 【終わりにしよう】
7/16/2023, 2:19:12 AM