浜崎秀

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注:拷問、残酷描写あり 苦手な方はお控えください














「ヒトの指ってどうやってできてるか知ってる?」

 出社初日の質問だった。

「いいえ」

「じゃあ来い」

 そう言われ、いきなり地下に通される。最初に感じたのは、むせかえるような血の匂い。部屋にはブルーシートとビニールがしかれ、中央に下着姿の男がいた。四肢は椅子に縛り付けられ、顔には青痣。口からは血と涎が垂れている。

「起きろ。お寝坊さん」

 先輩はそう言って椅子を蹴った。男はビクッと身を震わせ、何かうわ言を言っている。

「じゃあいくぞ」

 先輩は銀色の鉈を手に取り、男の手を台の上に乗せる。

「新人、バケツ持っとけ」

 部屋の隅に空っぽのバケツがある。ほんのりと鼻を刺す、嫌な匂いがこびりついている。

「何に使うんです?」

「見てりゃわかる」

 先輩はそう言って鉈を振り上げ、まっすぐ下ろした。

「ぎゃああああああああ!」

 男の悲鳴が狭い部屋に響き渡る。彼の指は勢いよく弾け飛び、僕の足元に転がってきた。僕は2.3歩後退り、壁にぶつかった。

「どうだ? 見てみろ。凄いだろ」

 そう言われ、恐る恐る彼の一部だったものを拾い上げる。断面からは血が垂れ落ち、中にうっすらと白い塊が見える。

「いやー、我ながら綺麗な切り口だな」

 先輩は誇らしげにもう片方の切断面を見ながらそう言ってる。

「よし、次はどこがいい? 胃か? 小腸か?」

 まるでおもちゃを自慢するかのように内臓の話をする先輩がひどく不気味に見えた。

「いや、まずは筋肉だな。やっぱ拷問官になるからには、肉の切り方から知らねえとな」

 再び男の悲鳴が上がり、赤い液体が飛び散る。先輩は子供みたいにはしゃいで男を切り刻んでる。目の前の事象のあまりのグロさに、僕は思わずバケツに吐いていた。

「新人、お前もやってみるか?」

 笑顔でそういう先輩の顔は、むりやり遊びに誘ってきたいじめっ子を思い出させた。


『子どものように』

10/13/2022, 12:33:38 PM