たーくん。

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星空の下で賑わっているお祭り会場。
夜店が沢山出ていて、大勢の人が歩いている。
あの日の景色を見たのは、これで何度目だろうか。
あとは、あいつをここに呼び出すだけだ。
ノートパソコンを開き、あいつのデータをここへ転送する。
10%……30%……50%……70%……90%……96%……。
96%で、止まってしまった。
エラーが発生し、パソコンの画面が消える。
お祭り会場も、夜店も、人も、次々と消えていく。
最終的に、僕一人だけになってしまった。
やはり、あの日を再現するのは不可能か。
恋人だったあいつは、あの日、僕と一緒に地元のお祭りに来ていた。
当時の僕はお祭りには興味なく、素っ気なかったと思う。
それでもあいつは、楽しそうにニコニコ笑っていた。
僕達はお祭り会場で現地解散し、あいつは帰り道の途中で事故に遭って……死んだ。
もし、僕があいつを家まで送っていたら、事故に遭わずに済んだのだろうか?
……それ以前に、素っ気ない態度でお祭りを回ったことが僕との最後の思い出だなんて、最悪過ぎる。
だから僕は、あの日を再現してやり直そうと思った。そして、謝ろうと思った。
「ふう……」
大きく溜め息をつく。
またデータが壊れてしまったから、1からやり直しだ。
VRゴーグルを外し、現実へ戻る。
僕のやっていることは、ただの自己満足なのか、罪滅ぼしなのか、まだ分からない。
あいつと再びお祭り会場へ行くために、ノートパソコンを開き、作業を始めた。

7/8/2025, 11:20:48 PM