作品

Open App

#紅茶の香り

紅茶の香りは苦手だ。

高校卒業後就職してすぐ家を出た。
会社が準備してくれた寮ではあったものの、会社の目はなく
自由に友達を呼んで毎週末は誰かしらが家にいた。
その頃はまだ若かったこともあり、夜遊びが酷かった。
その時たまたま飲食店で出会ったとある方(以後sと称します)
と仲良くなり、出かけたりsの家に招かれたり逆に、
自分の家に招くこともあった。
だが、男女の友情は成り立たないものだ。
お互いの家に上がる度営みはあった。
営みの後は必ずといってsが淹れてくれる紅茶があり、
当時はその香りが好きだった。
甘く心地の良い香り。
味は苦手だったが、一緒に飲む時間も好きだった。
その時の自分は何を思ったのか、sとの関係を壊したくない、
けど、先に進みたい。そう思った。
そう思った次の日が、自分の背中を押すかのように七夕の日。
その日はsの家に招かれていて営みもしてゆっくりしていた頃

「sが好き」

そう、ぼそっと呟いた。
最初は聞こえていなかったのか返事はなくsは部屋を出た。
部屋に取り残された自分の心臓の音だけがうるさく響いた。
数十分後
「ごめん、付き合えない」
ソファーに座る自分の横に座り、沈黙の中sが呟いた。
断りを言われ、自分は強がったのか
「え、なんのこと?」
と引きつった笑みで言ってしまった。
sに今日はもう帰ろうと言われ沈黙の車内でその日は帰宅した。

数日後
先輩に突然相談をされた。sが浮気しているかもしれない。
その相談に衝撃を受け、名前をもう一度確認した。
まさに、先日自分が告白したsだった。
そう。自分は先輩の恋人に手を出したのだ。
すごく罪悪感に苛まれ、理由をつけその場を離れた。
感情はぐちゃぐちゃ。
夜だったのが救いかの様に泣きながら帰宅した。
ふとキッチンに目を向けると、
sが家に置いていった紅茶が目に入った。
先日の告白を断られたのは、先輩と付き合っているから。
自分はただの遊びだったのだ。
そう思ったら自暴自棄になった。
sに対し先輩との事実確認となぜ遊び感覚で自分を弄んだのか。
それを聞きたかったがために店に向かった。

カランカラン
店の扉を開き、他のお客さんがいる中sを呼び出した。
店の店長さんと仲良かったこともありsとの時間を頂いた。

「○○さん(先輩)知ってますか?」
自分が呟くとsは焦る様子もなく知ってるよと答えた。
悪びれのないsの態度に腹が立ち怒鳴るように問い詰めた。
遊び相手に自分を選んだ理由、
遊びなのに自分に愛を囁いた理由、
先輩との関係はいつからなのか、
様々なことを問い詰めた。
sの態度は変わることなく淡々と答えるのかと思いきや、
開き直りと高笑いしながら返事をした。
「そうだなー、○○とは2年くらい付き合ってるかなー。
でもさ、全然相性良くないんだよねー笑
でも、○○知ってるならわかると思うんだけど顔は可愛いんだよねー笑男なら誰しも可愛い女傍に置いときたいじゃん?
あー、あとなんだっけ?好きとか愛してるって言った理由だっけ?そんなの簡単じゃん笑そう言っとけば女なんてちょろいからに決まってんじゃん笑」
そう笑いながら先輩を貶すかのように顔顔と言いながら自分を罵ってきた。
「あ、そうですか。○○さんがsさんに浮気されてるかもとご相談を受けたので今回こうやって聞かせて頂きましたが、そのような態度なのですね。分かりました。どれだけ自分が馬鹿だったのか理解出来ましたし、○○さんに対しても自分に対してもすごく失礼な人間なんだなと確認できましたのでsさんと縁を切らせてもらいます。さよなら」
人間冷静になってしまえばどんな対応でもできるのだと我ながら思った。
sは、自分が泣きつくと思っていたのか、冷静な態度で返事をした自分に対し呆気にとられあほ面していた。
それを尻目に自分はその場から立ち去った。

後日
自分は、sの浮気を相談してきた先輩に事の発端を全て説明した上で先輩に嫌われる覚悟で謝罪をした。
先輩は、
「そーゆーことね。お互い何も知らなかったとはいえやってしまったものはしょうがないし、sが人間としてクズなのは分かったからもう咎めないし、○○(自分)とはこれからも一緒に
仲良くしたいから仲直りしよ。」
そう優しく言われ泣きながら先輩と和解した。
後々聞いた話、先輩の家にも同じ紅茶を置いていたらしく、
sと別れてすぐその紅茶を捨てたそうだ。
同じく、自分もその紅茶をすぐに捨て、
sが持ち込んだ茶器も売った。

10/27/2024, 2:43:43 PM