喜村

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 あたりは消毒された匂いで充満していた。あたりは白色で埋め尽くされている。
首だけを小さく動かすと、色々な管が張り巡らしてある。どれがなんの管だかわからない。
 私はどうしたんだっけ、今日はいつだっけ、今どういう状態なんだろう。
 声はでない、口が半開きになって呼吸は管でできているようだ。痛いの感覚もよくわからなくなっていた。

 もう、長くもないのかな。

 死に急ぎい訳でもないけど、生きててもずっとこのままなのも、それこそ何のために生きているのかわからない。
 治療をするためのお金ももうないのではなかろうか。
 死に際だから一つだけ、最期に一つだけ、お願いができるとすれば、自由に動きたいな。
ご飯を食べたり、寝返りがうてたり、外を駆け回ったり、歌を歌ったり、自由に、動きたいな。
 目を閉じたら、もう開く気力も体力もなくなりそうで、ぼんやりしたまま私はただ白い天井みていた。



【1つだけ】

4/3/2023, 10:53:48 AM