私は死んだ。
理由は至極単純なもので
信号無視の車にハネられるというものだった。
では何故死んだ私が現世にいるのか。
霊というのは49日は現世に残れるのだそうだ。
私はそんな摩訶不思議な状況に、
そんな年齢でもないが好奇心が湧いてしまったのだ。
まずは病院へ行った。
集中治療室の中で冷えた私の手を握りながら
私の妻が泣いていた。
次に私をハネたやつの所へ行った。
丁度裁判をしていて中々に酷い額を請求されていた。
何日か日の昇るのと沈むのを繰り返した。
金を払って火葬して、
金を払って葬儀して、
その葬儀で金を受け取り、
ハネたやつからの金も受け取り、
金を払って墓を作る。
不幸な訳ではなかった。
ただ幸せかと言われても頷けない。
このまどろっこしい感覚を私は初めて味わった。
私という存在が金に埋もれていく気がした。
ああ、あの狭い中だときっと自然に還る事もできない。
喪失感が残った。
妻は相変わらず思い出しては泣いて、
命を奪ったものに憎しみを向ける。
少ししたら落ち着いて、
温めたご飯に箸をつける。
人はこんなにも呆気ないのだろうか。
もう無い胸に穴が空いたようだった。
[お金より大事なもの]
3/8/2026, 12:38:46 PM