『今週は毎日22時まで残業でちとしんどかったです笑』『土曜日お仕事がんばです!』
今までにない気持ちの揺れに翻弄されていた彩子は、最低限の家事すらまともにできていなかった。
八木橋を見習って午後から半休を取り、掃除洗濯買い出しのすべてを片付けることにした。
「何かしらプレゼントを渡してみるといいかもしれません。クッキーとか」
「あー、ウイスキーならナッツとレーズンがいいかもね。ビールならジャーキーとかサラミとか」
占い師のアドバイスを鵜呑みにして、帰路に着く前にKALDIへ向かう。自分がビールを買ったからと嘘をついて社長から聞き出したおつまみを、ふたつほどカゴに入れた。合わせて600円程度、金額的にも彼に気を遣わせない程度に済んだ。
100均で紙袋も買い足す。初対面の時、彼はバッグを持たず、財布をズボンのポケットに入れていた。明日もそうなら、取っ手のついたある程度しっかりした作りの袋が必要になる。クリスマス柄だとあからさまなので、シンプルなデザインのものを選んだ。
知り合って間もない男のために、自発的に何かを買うなんて、彩子にとっては初めてのことだった。
「残業続きでお疲れでしょうから。良かったらお酒と一緒にどうぞ」
戸惑う彼の表情が浮かんだ。
【贈り物の中身】
12/2/2025, 2:47:47 PM