つつも

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【お気に入り】

不思議な夢を見た。
河原で1人佇んでいると、遠くから女の子がやって来た。
「お兄ちゃん。わたし、困ってるの。助けて欲しい」
この状況を気にも止めなかった俺は快く了承した。
女の子はありがとうと言って俺の袖を引っ張る。彼女に連れられていくと、そこには小さな石が積まれていた。
「これをもっと高くしたいの」
俺は彼女と石を積み上げる。膝丈くらいまで高く積み上げると、女の子は飛んで喜び、お礼と言って小さな黒い人形を差し出してきた。
「お気に入りなの。お兄ちゃんに持っていて欲しい」

そこで、目が覚めた。
変な夢だと思いつつも、大学へ行くため支度し玄関を開ける。そこで足が止まった。
玄関先に小さな人形が落ちている。
拾い上げてみると、どことなく夢で見た女の子に似ている気がした。直感的に、これは夢のあの子がくれたものだと気がついた。
少し気味の悪さを覚えつつも、何故か俺はその人形をポケットに入れていた。
その通学途中、俺は信号無視の車に跳ねられた。

目が覚めたのは病院の中だった。奇跡的に軽い打撲で済んだらしい。
医者の話をぼんやりと聞きながら、右の太ももがじんわりと熱くなっているのを感じた。
軽く触ってみると、熱くなっていたのはあの人形だった。

あの女の子が守ってくれたのか?
なんにせよ、俺は彼女がお気に入りだと言った人形を今でも大切に持っている。

2/18/2024, 9:16:31 AM