逆さま(2023.12.6)
冬の朝の空気は肌を刺すほどに冷たいが、どこまでも澄み切っているようで、私は好きだ。冷たい空気を胸いっぱいに吸い込んで、大きく吐き出すと、白い息がさらさらと流れていく。太陽はまだ地平線から少し顔を出したところで、白っぽい朱色の光が世界を照らしている。
あぁ、綺麗だな。最後にそう思えたことに満足して、私は虚空へ一歩を踏み出した。
冷たい空気を切って落ちていく中で、大好きなあの人の顔が逆さまに見えた気がして、私はふっと微笑んで目を閉じた。
12/6/2023, 10:17:55 AM