檸檬味の飴

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風邪を引いた。

最近、風邪になることが多い。
この前風邪になったのは1週間前で、やっと鼻もすっきりしてきたかなと思っていた頃だったのに。

今回はもっと酷い気がする。頭を殴られてるような頭痛はするし、喉は痛いし、咳は酷いし、散々だ。
流石に仕事もままならないので今日は会社を休んだ。

でも風邪薬は無いし、お粥を作る気力はない。今私ができるのは布団に潜ることだけ。
電気毛布を敷いていたのは不幸中の幸いだろうか。

そうしてぬくぬくしていると、窓からポツポツと音がしてきた。
雨が降ってきたみたいだ。

一人暮らしの暗い部屋に雨の音だけが響く。


…あぁ、そういえば1週間前、彼が来てくれたときもこんな雨の日だったなぁ。







「佐々木、開けるぞ」

がちゃっとドアを勢いよく開けて私に駆け寄ってきたのは、百瀬さんだった。


「百瀬さん、どうしたの、」

掠れた声で言う。すると、

「佐々木、喋らんでええから。寝とき。」

と私の近くにさっき行ってきたのであろうコンビニの袋を置いた後、キッチン借りるでーと言ってそそくさとキッチンへ行ってしまった。
何日か前の飲み会で私が酔ってしまって、家まで介護してもらったとき、もしまた何かあったらすぐ行けるようにと言われて合鍵を渡してしまったものの、こんなにも早くお世話になってしまうとは…。

百瀬さんに寝ておけと言われて大人しく布団に潜っていると、百瀬さんがキッチンから出てきた。


「起き上がれるか?」

「うん、」

とゆっくり起き上がれば、百瀬さんは私の傍にしゃがんだ。

「お粥勝手に作ったわ。すまん。」

「いや、有り難いというかなんというか…」

「食べれる?」

「ひ、一人でた、食べれる、」

百瀬さんがスプーンで一口分を掬って私の口元に持ってきたので慌てて大きな声を出してしまった。

「そか、熱いから気いつけや」

と言って私はお粥を受け取った。あったかくて、食べると身体がぽかぽかしてきた気がした。
コンビニ袋の中にポカリあるから飲みたいときは飲んでな、と言われて、改めてこの人って私の彼氏なんだなと感じた。

「何から何までご迷惑を…、、」

と頭を下げると、百瀬さんが私の頭をくしゃくしゃっと撫でたあと言った。

「自分の彼女が風邪で会社休みますなんて俺が見過ごすわけにはいかへんのや」

私はすぐに顔をあげて目を丸くした。

「え、仕事は…どうしたの…?」

「あがってきたで。彼女の看病に変えたらどうってことないわ」

「大丈夫なのそれ…」

「大丈夫大丈夫。上司が部下を心配してちょっと家に寄ってるってことになってるから」

「そっか…。えっと、ありがとう」

照れ臭いけど、口に出せた。

「ど、どういたしまして?」

「なんで疑問系なの」





なんて会話をした…日もあった。


あんな事がなかったら、今頃またお粥作ってくれて、彼の笑顔も見れてたのかな。




〈風邪〉12/16

12/16/2022, 1:01:06 PM