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▶88.「小さな勇気」
87.「わぁ!」
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1.「永遠に」近い時を生きる人形‪✕‬‪✕‬‪✕‬
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翌朝、引き続き施設内の捜索と、新たに周辺探索を始めた。
周辺探索については、万一にもフランタ国民と遭遇しないよう、また痕跡を残さないように気をつけなければならない。

「と言っても、こっちは雪がない分、楽なもんじゃな。足跡も残りにくいしの」


「課長、支度整いました」
「うむ。近くに集落があるかどうか、また人が入っている形跡があるかどうか。この点に注意するのだ。よいか、山の幸を探すのに夢中になるでないぞ?」
「分かっておりますよ」
「頼んだぞ」

部下2人を送り出し、わしは施設内に戻った。
多少出口から光が入るとはいえ、目が順応するまでは暗闇と同じだ。
奥に入れば、その光も届かない。
だからといって、いたずらにロウソクをつけるわけにもいかない。
地下通路では安全確認の意味を含めて灯し続けたが、何本もあるわけではないのだ。

「課長、あちこち触りましたが電源らしきものは見つかりません」
「一人や二人程度では、そんなもんじゃ。転ばぬように引き続き探せ」

「はい、わかりっうわぁ!」
言った先から、
がっしゃん、どしんと凄い音を立てて部下が転んだ。
崩れた家具にでも足をつっかけたのだろう。
まだ歩いていないところに足を踏み出すには、慎重さを失わない小さな勇気が必要じゃ。

昼ごろになって、外に出ていた部下たちが戻ってきた。
「無事で何より。どうじゃった」
「はい、施設の周辺に人が頻繁に入っているような形跡はありませんでした。また、集落は麓に見えましたが、ここが山あいに面しているため、かなりの距離があります」
「ご苦労じゃった。残念ながら、こっちの収穫はなしじゃ。昼食後はこっちを手伝うように」
「承知しました」

「さての、このままグダグダ探すのもアホらしいな。かといって施設の資料室から探すのは、ちと骨が折れるしの」
昼食後、捜索を再開する前に持ってきた資料を見直す。
「なんか、これが怪しいんだがのぅ…なぁお前たち、どう思う」
「例の瞳、ですか」
「掃除しろってありましたよね。掃除されてないからダメってことですか」
「瞳…簡単に言えば目ですよね。とじるとダメ…まぁ暗くて確かに見えないけどな」

部下の一人が目を開けたり閉じたりしながら呟いた。

「ふむ、閉じると暗い…開けば明るい…光か!豊富にある光といえば太陽じゃ」
「地面には、それらしいものは見当たりませんでした」
「王宮を出発する前までついとったんじゃ、埋もれてるとは考えにくい。となると、この岩が怪しいの」

全員で岩のあちこちを探すが、何も無い。

「仕方ない、お前たちの誰かが上に登るんじゃ」
「ええ、こんな高いの無理ですよ!足をかけるようなデコボコもないし!」
「肩に乗るんじゃよ」
「怖いです!」
「小さな勇気こそ肝要じゃ。がんばれ」
「課長の鬼!」

部下たちが、顔色を真っ赤にしたり真っ青にしたり、
やいのやいの騒ぎながら1人を岩の上に押し上げていく。

「あっ!布、布があります!これは、石で押さえているようです」
「それをこっちに寄越せ。恐らく中に日光の取り込み装置があるはずじゃ。慎重にやれよ」

やはり、中には日光を動力として取り込むためと思われる装置があった。
そして回収した布は、この施設が使われていた頃を考えると、明らかに新しい。
「これで確定じゃな。今回の異変は人為的なものじゃ。しかも相手はイレフスト国の技術や施設に詳しいと見える」

仕方ないのぅ。

「2人は王宮に戻り報告。軍に掛け合って応援を呼んでくるんじゃ」
「えぇ!?課長は!?」
「わしは、この施設を調べなきゃならん。お前たちだけでは経験も技量も足りんからの」
「あの将軍こわいんですよぉ」
「言ったじゃろ。勇気じゃ勇気」

1/28/2025, 9:51:02 AM