銀鶏

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君をずっと見てきた

少しだけ、遠く離れた場所から。

誰かの言葉に、態度に、視線に
もう振り回されることはない

笑われたり、蔑まれることもない

君は誰よりも不器用だった
その優しさがいつも空回りしていた
だけど君は、誰よりも真っ直ぐに生きてきた

気付いていたよ、誰も気付いていなくても。


君をずっと見てきた

今はこんなにも、近くに居る。

「迎えにきたよ」
君はゆっくりと目を瞑る

それはまるで何も知らない
無邪気な子どものようだった

「この歌、知ってる?」
君は嬉しそうに口ずさむ

傷だらけの君が
あの日はとても眩しく見えた

熱を帯びたまま二人は手を繋ぐ
そして隣を歩く君にそっと語りかける

「もう一度、歌の続きを聴かせてよ」


#ただひとりの君へ

1/20/2025, 1:32:35 AM