他者に姿を視認されない。他者に声や音を聞かれない。殺意や気配を察知されない。抵抗の暇を与えない。確実に息の根を止める。関与を疑われる情報や痕跡を残さない。
最低でもこれらの事ができなければ、この世界では生きていけない。それらをし損ね、組織の存在が表社会に流れる懸念が生まれれば…警察が手を出すより早く、俺や他の幹部が、しくじった奴を処分する。
処分さえ終われば、後は警察がどう動こうが此方に影響はない。処分された奴の家宅捜索が行われたところで、組織との繋がりがある情報は見つからないからな。
「…はぁ。」
今夜、好奇心に殺される奴が一人。
痕跡の抹消と捏造が上手いもんで、使いやすい奴だったんだが…まぁ、仕方がない。
幹部への昇格に関する話と偽っておびき出し、胴を斬る。
もっとも、この初撃は避けられるか、受け流されることがほとんどだ。
人を殺める側でありながら、殺められる側となる可能性を思慮しない奴は、とっくに何かをしくじって処分済みだからな。
だが問題ない。本命の喉を斬る。声を失い、服と口が鮮血に汚れていくのに痛みがないという状態は、どんな気分になるんだろうな。
逃げる暇を与えず、腱を斬る。大抵の奴は、ここでやっと痛覚麻痺に気付き狼狽える。俺が胴体を斬ろうとした時点で、とっくに痛覚は麻痺してるんだが。
最後に、心臓を刺し、そのまま胴を斬り裂く。痛覚がないからこそ鮮明に感じるであろう「肉を断ち切られる感覚」ってのは、どんな味なんだろうな。
…いや、普通に血の味か。痛覚が正常に機能していれば、もしかしたら他の体液の味もしたかもしれないが。
お前の処分担当が、「痛覚を無効化できる」俺でよかったな。
(「BANDIT」―Ψ―)
12/1/2024, 12:00:50 AM