ほろ

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さて、どうしたものか。
我が化学部には、幽霊部員がいる。大して部活に参加していないし、居てもいなくても変わらない不良。だが、ここ1ヶ月程、まったく部室に寄り付かなくなった。それが問題である。

原因は分かっている。
この部室が好きだから顔を出すんだろ、と言ったら、彼は私に会いたいから来ているのだと言った。その次の日から来なくなったのだから、恐らく羞恥心が邪魔をした結果の部室に寄り付かない、なのだろう。
「ずっと彼相手に独り言を言っていたからな……話し相手がいなくなるのは困る」
ぎ、とパイプ椅子が音を立てる。
やはり今日も、部室の扉は開かない。彼の羞恥心をどうにかしない限り、私以外があの扉を開けることはないのだろう。
「連絡先は知らないし、電話もできない。唯一話せるとしたら部室だが、それにも寄り付かない……となれば」
私は、立ち上がって机に転がったままのペンと置きっぱなしの紙を手に取る。そして鏡文字とはどう書くんだったか、と思考する。
「こういうのはSNSや学校の掲示板では書けないしな。どうせ部室の様子くらいは見に来ているんだろう」
『私も』の2文字。それさえ書けば分かるはずだ。
私は、扉の上方にあるガラス窓に紙を貼り付けた。

「ふふん、さっさと来るんだな、幽霊部員くん」

2/7/2024, 2:02:44 PM