笹海

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「星は、想いの欠片なんだよ」
 そう言って口元だけで笑うあなたを見たのは、あの日で最後だった。何にも言わずに消えて、そうして二度と戻って来なかった。
 夜空を見上げたあなたがあの日、何を思っていたのかは分からない。ただ、星に重ねたその“想いの欠片”を追いかけて行ったことだけは確かだった。
 あなたが居なくなった今、独りきりで夜空を見上げる。黒いベルベットにダイヤモンドを散らしたようで、腹が立つほど美しかった。こんな空に紛れ込ませるには、私の想いは醜悪すぎるだろう。
 ひとつ、溜め息を吐き出す。星にはなれないのならせめて、あなたの思い出を食い潰して生きていくことを許して欲しい。

7/16/2022, 12:52:46 PM