《踊るように》
僕は、広場横の通りを彼女と二人歩いている。
広場には銀杏の樹が植えられている。
季節により新緑から鮮やかな黄、葉が落ちた枝の慎ましくも逞しい様と、取り取りの趣を楽しませてくれる。
今は、色濃い緑が徐々に黄色に変わる支度を始める時期。
夏の高い青空に映える濃緑から、秋の優しい空に馴染む緑へ姿を変えつつある。
吹く風のリズムに合わせさやさやと揺れる銀杏達。
僕はふと立ち止まり、そよぐ緑に耳を澄まし目をやる。
彼女も僕の隣に佇み、同じように銀杏に目を向けた。
優しい風にも誘われて、僕達は広場に立ち寄る。
その空間は優しい風と銀杏の葉のささやきに満ち、心が安らぐ。
しばしほうっと佇んでいると、一陣の風が広場を吹き抜けた。
急速にグッと強くざわめく銀杏。
風の指揮を合図に、その演奏は始まった。
突然の風に驚き隣を見ると、彼女の白い髪が木漏れ日を浴び虹色に輝きながら舞っていた。
その白は、闇に魅入られた者が持つ色のはず。
しかし、風に煽られ踊るように光り輝きふわりと靡く髪を耳元で押さえる彼女の横顔は、とても清廉に見えた。
その髪が靡く横顔に、僕の胸の鼓動が鳴った。
…dansant…
9/8/2024, 2:50:14 AM