クローゼットを開けて随分増えたなと思う。私のクローゼットには私が買った洋服だけじゃなく、彼から貰った贈り物が場所を同じにしてしまってある。どれもこれも彼から貰った『大切なもの』。洋服に靴に、アクセサリー…。私には手の届かないブランドだったり、実はオーダーメイドで金額を思わず聞いてしまい倒れそうになったことがある。彼の金銭感覚は一般人の私とズレていながら、それだけの収入があって良いものを見定める目を持っていた。
自分の趣味を全面的に押し付けず、私の持つ物と合うように選んで贈ってくれて、実は密かな楽しみになっている。言ってしまったら贈り物のペースが倍になるため彼には秘密。
忘れることなんて、離れることなんてしないのに貰った物には必ず彼の色が入っている。ギリギリまで押さえた彼の独占欲かもと思うと可愛くて、彼の代わりに鯨のぬいぐるみを抱き締めた。
形のない愛情も貰っているのに贈り物として形のある愛情も。そのうちクローゼットは乗っ取られているかもしれない。愛情が目に見えてわかってそれはそれで面白く彼に見せて自覚させたら少しは落ち着いてくれるのだろうか?今度やってみよう。
一番『大切なもの』は私の指に。毎日眺めて磨いては肌身離さず付けている。青い青い宝石の付いたシンプルな指輪。「ちゃんとした物じゃないけど…」頬を掻きながら嵌められて彼の指には私の色が乗っていて、その時のとても幸せな気持ちは今でも鮮明に思い出せた。
4/2/2023, 9:55:02 PM