Lacryma

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「どうして私と仲良くしてくれるの?」
木の葉の合間から燦々と降り注ぐ陽光の中
貴女は美しい緑色の瞳を私に向けた
彼女はこの森を護るエルフと呼ばれる存在で
しかし人間からは異端の象徴として恐れられていた
「どうしてって、私たちは友達だもの」
私は貴女に微笑みを返した
私の愛する森を護る貴女に
私に優しさと愛をくれる貴女に
今この瞬間だけは安心してほしかった

「ありがとう、私の側にいてくれて」
ふいに貴女がそう言った
私は突然の言葉に驚いてしまう
お礼を言うべきは私の方なのだから
だって、私は人間で
貴女は私を嫌ってもいいはずなのに
どうして貴女はそんなに暖かいのだろう
「私の方こそ感謝しています、ありがとう」

「ねぇ貴女、もし私が消えてしまっても
ずっと側にいてくれる?」
ある日、貴女は花を眺めながらそう言った
「それって、どういう…」
思わず呟いた私の言葉に
貴女は悲しそうに微笑んだ
「私は、この森を護るエルフだから」
私はその言葉を聞いて、ある昔話を思い出した

森を護るエルフの最期
それは自身がその地を守る大樹になる
「まさか、貴女はもう」
私の言葉に貴女は頷いた
「ずっと長い間、私はこの森を守ってきた
ずっとずっと、独りだった
でも、ある日貴女が来てくれたの」
貴女は私の手を取って
私の瞳をまっすぐ見つめて微笑んだ

「ありがとう、私に優しさを、愛を、
暖かさを教えてくれて
本当に、本当にありがとう」
貴女の体温が消えていく
貴女の姿が消えてしまう
そんな、待って、行かないで
心には貴女を引きとめる言葉ばかり溢れてくる
でも、決して口には出さなかった
代わりに、もっと強い想いを伝えよう

「私の方が、ずっと感謝しています
ありがとう、仲良くしてくれて
ありがとう、側にいてくれて
優しさも愛も暖かさも
貴女が、貴女こそが私にくれたものだから」




「ねぇ貴女、私ね、物語を書いてみたの」
森の中にあるひとつの大きな大樹の下
目を閉じて、燦々と降り注ぐ陽光の中で
私は貴女に微笑みかけた
「この物語を見たら、皆わかってくれるかしら」

私の大好きな森を守る、大好きな友達のお話を

2/15/2025, 12:06:20 AM