劉蓮

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放課後の静かな図書室内で今日も本を読む。
私は太宰が好きだ。
『人間失格』、『女生徒』、『斜陽』、『如是我聞』...
よく太宰は暗いと言われるがその中でも人間味を感じた。
なんとなく自分を重ねてしまうのだ。

理解できない、理解されないその感情が...

何度も繰り返し読んだ『グッド・バイ』
彼の遺作とも言われている、この作品。
死の直前まで書いていたと言われている未完の作品。
彼は一体何を思って執筆したのだろう。
彼が生き続けていたとして、この後の作品の行く末はどうなったのだろう。

気になりはしたが私は読みたいとは思えなかった。
なんせこの作品は未完であってもいい話なのだ。
未完であるからこそ引き込まれる...

彼の人の気持ちに寄り添える。
そう錯覚できるのだ。


閉館を知らせる放送が流れ始め私は本に紙を挟み、そのまま棚にしまった。

図書館を出てそのままある場所へと向かった。
目的地にたどり着き上を向くときれいな夕日が視界に広がった。

---あの作品を読むのも今日でおしまい

私は柵へと近付き乗り上げた。

---さようなら

暗転した世界を他所に私は目を瞑り別れを告げた。




後日、とある学校の1人の女子生徒が屋上から飛び降りたとニュースになった。
とても大人しい生徒でいつも図書室で本を読んでいた。
彼女がよく借りて読んでいた著書に遺書が挟まれており自殺であったことが裏付けられたのだった。


好きであるが故に作品に、作者に魅了され道を踏み外してしまった哀れで憐れな少女の話。


#好きな本

6/15/2022, 5:50:12 PM