私は「彩色」という本が好きだ。
その本は、初めから終わりまで幻想的な風景が描かれている。
かなりのページ数だが、文字は一切無い。
一つ一つの風景が、物語のように繋がっていることも無い。
ただ、風景だけの本。
私はその本が大好きだった。
何回読んでも、風景の美しさや新鮮さが薄れなかったのだ。
別の日に同じページを見ても、違う物語がどんどん浮かび上がってくる。
ある日には太陽が眩しい青春のような晴天に、ある日には異変が起き、「世界と少しズレてしまった」と感じるような空に。
ある日には辺り一面セレストブルーの花が咲く花畑に、ある日には雨上がりの水溜まりに反射するビル街の風景に。
何故こんなにも変わって見えるのかとても不思議だったが、読み込んでいくうち、私の想像力をとても豊かにしてくれたことは確かだ。
6/15/2024, 4:50:57 PM