「お?」
実家の花壇に花を植えるべく穴を掘っていたところ、なにか硬い物をカツンと掘り当てた。
下水管か?
こんな浅いところにあるわけないと思いながらも、丁寧に周りの土を取り除く
そして出てきたのは、小さい頃埋めたタイムカプセルだった。
「懐かしいな……」
小学生の時だったか、当時の宝物をこのタイムカプセルに入れて埋めた
何を入れたかまでは覚えてない。
それにしても懐かしい。
「開けてみよ」
私はタイプカプセルのふたを開ける。
当時のお宝、いったいなんだろう。
昔のおもちゃだといいなあ。
……だってプレミアがついて高く売れるんだよ!
思い出?
そんな腹の膨れない物よりは金だ!
金があれば、欲しいものが買える。
世の中金だよ!
そして私は勢いよくカプセルの蓋を開け、そして出鼻を挫かれた。
タイプカプセルに入っていた物は、ちゃちな玩具の金庫だったからだ。
なんで金庫があるのか……
私は古い記憶を掘り返す。
そうだ。
宝物を入れる時悪い奴が見つけたら大変と、宝物を金庫に入れたのだった。
なので玩具といっても、番号を入れないと開かない本格志向。
プラスチックで出来ているとはいえ、黒く塗ってあってなかなかの貫禄である。
けれど、その点はさして問題ではない。
問題は、そう!
番号が分からない!
一応、金庫を壊す選択肢もあるけどそれは取りたくない
中のものに傷がついたら、価値が無くなってしまうかもしれないからだ。
破壊は最後の手段である。
なにはともあれ、正攻法を試してみよう。
話はそれからだ。
私の誕生日――違う。
電話番号下4桁――開かない。
上4桁か?――だめ。
違う、違う、違う。
思いつく限り4桁の番号を入力してみるが、開く気配はない。
うーむ。
やりたくはなかったが、こうなったら……
番号総当たり!
時間はかかるけど、これが確実。
くそめんどくさいけど仕方ない。
あとは飽きるまでに当たればいいだけだ。
じゃあ、最初の番号0000。
カチッ。
「あっ開いた」
初期設定のままだったか……
せっかくやる気出したのに急に梯子を外されたようで、なんだか恥ずかしい気持ちだ
ま、いいさ。
これを開けたという事は、お宝が手に入るという事。
では御開帳!
小さい頃のお宝はとはいったい……
「へっ?」
私は思わず変な声を出す。
誰かが見ていれば、さぞ笑える顔だったに違いない。
私は金庫の中から宝物と取り出す
金庫から出てきたの――それは丸くてフワフワのタンポポの綿毛だった。
金庫にしまってあったから湿度がいい具合だったのか、それともただの奇跡なのか?
まるで、さっきまで地面に生えていたような瑞々しさ。
私は目の前のタンポポに目が釘付けになる
これが宝物?
たしかにタンポポの綿毛は、この歳になってもそそるものはある。
けれど、小さいとはいえこれを宝物と呼ぶには無理がないか……
どちらにせよ、金になるものではない。
がっかりだ。
そうして私が落ち込んでいると、急に強い風が吹いた。
するとどうだろう。
待ってましたと言わんばかりに、タンポポの綿毛が風に乗って飛んでいく。
私の視界を白く埋め尽くす綿毛たち。
その光景を見て、私は思い出す。
そうだった。
小さい頃、私はタンポポの綿毛がを吹くのが好きだった。
まるで意思を持っているかのように、新天地へと向かう姿はとても幻想的だ。
命を繋ぐ尊い光景。
それこそが私の宝物
「綺麗だな」
私はすぐに見えなくなった綿毛を思いを馳せながら、あの頃を懐かしく思い出すのであった
10/31/2024, 1:35:20 PM