きぼう

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ジワジワと照りつける様な暑さの中
麦わら帽子をかぶって虫取りに勤しんだこと。

友達とふたりで分けて食べたソーダ味のアイス。

藺草の香り溢れるおばあちゃんの家で飲んだ
ちょっとだけ濃いカルピスの味。

すぐに落ちてしまった線香花火と、
夜空に輝く大輪の打ち上げ花火。

おとうさんに背負われ微睡んだ夕暮れ。

全てが懐かしい思い出で、
毎日がキラキラと輝いていた子どもの頃。

大人になっても、きっとその日々は続くのだろうと
信じていた無垢な瞳は、何時からか濁り。
カブトムシを掴んでいた手にはマウスが、
友人に見せた笑顔は死に、虚ろ目には液晶から漏れる光が滲む。

優しく甘いカルピスを忘れるようなエナジードリンクの味は、何時からかすっかり常飲するようになってしまった。
父の背を思い出す夕暮れには上司の怒鳴り声と終わらない書類の束。
打ち上げ花火は高層ビルに隠れ、残業の夜景に消える。
線香花火と同じように今にも消えてしまいそうなのは
懐かしい思い出か、それとも ___。

「あぁ、まだ《子どものままで》、いたかった。」

5/12/2024, 3:35:18 PM