烏兎

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「足並みを揃えるなんて時間の無駄。二の足を踏む暇があるなら即行動」
 空気の読み合いを足蹴にし、幼なじみは邁進する。
 眩しくて、かっこよかった。
 私と言えば、なかなか一歩が踏み出せない。躓いてばかりで、幼なじみの隣に並び立ちたいのに、走っても走っても追いつけない。
 でも、始まりは、ただ隣にいたかっただけ。
「まって!」
 幼なじみが振り返る。
「頑張るから、足引っ張らない様にするから!」
「……お好きに」
 幼なじみは歩き出す。でも、その歩みはいつもよりゆったりとしていた。優しいな、そんな君だから大好きなんだ。
 私は幼なじみに駆け寄ろうと、また走り出した。

お題:まって

5/18/2025, 4:49:16 PM