中学生の頃、部活の終わりだったか。梅雨明けを告げる雨がざあっと降った。私と部員たちは、何とか部室に駆け込み、そのまま屋根の下で雨宿りをした。
短いひさしの内に雨が入り込むも、妙に温かった。雨粒が、黄金色に輝く夕陽の光をひとつひとつ反射する。目に刺すような鋭い光だったが、生命に満ち溢れる力強さがあった。校庭の側にあった常緑樹の黒い影が、その黄金色の光をより映えさせる。砂埃が舞う校庭から湿った土の匂いがし、部室の裏にある木々の群生地からは草木の青臭さが薫る。
虹色に輝く大きな雨粒を眺めながら、私は夏が来たと高ぶった。極彩色の雨が、灰色の空と雲を青空と真っ白な入道雲に洗い流す。
15年以上前は、梅雨明けの最後の大雨に清められて、夏を迎えていたが、今はそのような体験を何度も何度も味わっている。ただ、どれだけ篠突く雨が降ろうが、完全に汚れきった雲を洗い流せない。子どもの頃に見た虹色の雨は、夢の中にでも蒸発してしまったのだろう。
いつかは、その虹色の雨がおとぎ話となって、昔日本には春と夏を繋ぐ梅雨という季節がありましたとさ、とおばあちゃんになった私が語る日が来るかもしれない。
(250628 夏の気配)
6/28/2025, 1:01:26 PM