明永 弓月

Open App

 楽しかった時間ももう終わり。街は急速に賑わいを失くしていく。煌々と輝いていたネオンは消え、人々は一斉に帰路に着いた後。静寂の中にあなたとふたり、今日を見送る。
 月のない夜。明かりの消えた街でふたりきり。空には無数の星が瞬いている。

 もうすぐ世界が終わる。有識者の見立てでは一週間もないという。一ヶ月前の情報から経過日数を鑑みるとそうなるが、元となる見立てが改められたとは聞いていない。一ヶ月前までは何度か変わっていたのだが、計算のぶれもなくなったということだろうか。
 一定の時間になると明かりが落ちるようになったオフィス街。終電もだいぶ早くなった。普段通りに過ごしたい人と静かに終わりを待つ人との間で少々揉めたそうだが詳しくは知らない。とある街では自棄になった人が集まっているという噂もある。秩序を保ちつつも、やはり混沌としているのだろう。

 約一ヶ月前からお互いに何も言わずに一緒に過ごしている。夜には家に帰って家族と過ごしているが、日中は共にいる。何をするでもなく、繁華街近くの公園でふたり、時の流れに身を任せる。移り変わる空、通りかかる人々、街の様子を眺めるだけ。以前の自分に伝えたら、贅沢な過ごし方と言いそうだ。

 いよいよ今日が終わってしまう。帰らなければならない。正直に言えば、離れ難い。それが難しいこともわかっている。
 だから、明日の約束をしよう。今日の別れの前に。
 また明日、あなたに会うために。

8/20/2024, 2:35:49 PM