『20歳』
「おめでとうございます。今日で二十歳ですね」
そう言いながら市の職員が差し出したのは、分厚い請求書だった。
二十年分の医療費、教育費、食費、光熱水費、住居費、日用品費、被服費、交通費、そして存在維持費。
端数まで細かく刻まれた数字の羅列が、僕の喉を締め上げる。
ふと窓の外を見ると、同じスーツ姿の若者たちが、市役所のロータリーに停められたトラックに次々と詰め込まれるところだった。
支払えない者は、アレに乗ってどこかへと運ばれるのだ。
少子化を極めた我が国は、子育てにかかる費用を全額国費で賄うことにした。国民はそれを喜んで受け入れた。
ただし、それは成人するまでの話。
二十歳になった瞬間に、それは本人負担の負債へと変わる。
さて、と目の前の職員が微笑んだ。
「あなたの返済プランを伺いましょうか」
1/11/2026, 9:58:49 AM