やりたいこと
「ねぇ、何で生まれてきたんだと思う?」
「急に壮大。どうした?」
悩み疲れて、浮かんだ疑問をそのままぶつければ、そんな言葉が返ってきた。少しだけ驚いたみたいに見開いた彼女の目と目が合って、彼女は優しく微笑む。
「今度は何悩んでんの?」
「……やりたいことがあって、生まれてきたはずなのに、そのやりたいことがわからないから。……どうしていいのか、わからない」
悩みすぎて寝不足になったせいで、くまがいつもより酷いことに気づいた彼女はそう問いかけてきた。素直に答えれば、彼女はおいで、と手招きした。
「別に、今やりたいことをやればいいんじゃない?」
「でも、それが前の私が望んでいないことだったら? せっかくやりたいことがあったのに、私のせいでそれが叶わなかったら、どうしよう……」
「たとえ、前のあなたが望んでいなくてもさ、今のあなたが望んでいることならいいんじゃない? だって過去を生きている訳じゃないでしょ? 生きている今しか、生きていくことはできないから。それにさ、もしかしたら、今やりたいことがいつか前のあなたのやりたかったことに繋がるかもしれないでしょ」
「……そっか。じゃあ、今やりたいことをしてもいいの?」
「もちろん。今やりたいことをしなさい。今を生きるのよ、今を生き続けるのよ」
そう微笑む彼女の笑顔に安心して、ゆっくりとその腕の中に飛び込んだ。
6/10/2023, 2:38:05 PM