いしか

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「巡り会えたらって、どこに巡るっていうの?」
「知らないよ。そんなのそういう経験した人にしか分からないよ」

辞書で調べてみると、長い期間を経て、思いがけずに人や求めていた物と対面する。
という意味らしい。

うん。確かにそうだよね。と納得するものの何だがいまいち腑に落ちない。

「私達って、この意味だったら巡り会った事になるの?」

「巡り会うって?うーん。言われればそうなるのかもね」

私と彼は、高校生の頃にお互い好意を持っていたことは薄々お互い気付いていた。
けれど、お互い勇気が持てずに友達のまま高校時代を過ごし、卒業してしまった。

卒業式の日。勇気を出して告白しよう。
そう思っていたけれど、いざ当日になると、何も言えなかったのだ。

そんな私と彼が再会したのは、高校を卒業してから7年後。
たまたま打ち合わせをする企業にお互いが居た。という感じで再会をし、お互い高校生の頃好きだった。という事を確認しあい、今も好きだ。という結論に辿り着き、今お付き合いをする仲になったのだ。

私達のこの出会いは、辞書の意味なら、
また巡り会えた事になるのだ。

「でも、やっぱり巡り会うっていう言葉じゃないなー。なんか巡り会うって、なかなかの奇跡が起こってこそ使う言葉の気がする」

「俺は今のこの状況。なかなかの奇跡なんだけどなー、」

「えっ?なあに?」

「ううん。何でもない」

並んでソファに座っていた私と彼。
そんな私の頬に彼がキスをした。

「うわっ、びっくりしたー」
「あははは、不意打ち。どう?ドキってした?」
「………………っしたよ、馬鹿っ」


巡り合い、なんて、そんな高尚なものじゃない。けれど、こうして好きだった彼と今こうして一緒に居られる事に、私は幸せをかんじるのだった。

10/3/2023, 10:35:31 PM