暗夜姫

Open App

夜の海。
静寂と闇に包まれ、波の音だけが静かに響く。
頭上には満天の星空。
闇に吸い込まれそうになる。
怖いけど、どこか落ち着く。
誰もいない。一人きり。
冷たい夜風が頬を撫でる。
少し不気味で、神秘的で。
ずっとこうして立っていたくなる。
闇に吸い込まれて、消えてしまいたい。
静かに、誰にも邪魔されずに消えてしまいたい。
とても辛い現実から切り離されたこの空間で。
今なら、消えてしまえそうだ。
もう、生きていたくない。
あんな現実に戻りたくない。
仕事が多くて、依頼されたら断れなくて。
断らないから、期待されて。
その期待が負担になって。
仕事が多くて、手が回らなくなって。
失敗して、怒られて。
なにもかもが負担になって。
責められて、嫌われて。
人間関係が上手くいかなくて。
自己嫌悪が止まらなくなって。
感情のコントロールが効かなくなって。
また、嫌われて。
”辛い””疲れた”を我慢して。
泣くのを我慢して。
笑顔で取り繕って。
そうしているうちに、こう思うようになった。

”死にたい”

最初は「たまに」だった。
それがどんどん頻繁に思うようになった。
そして、一人になるとそう思うようになった。
やることがなく、暇な時も。
考えないようにしても、それが思考を支配してくる。
たまに夢か現実かもわからなくなる。
常にだるくて、眠くて、頭が痛くて。
人の言っていることは聞こえているのに。
言っていることの一部が脳で処理できない。
何を言っているのか、聴き逃している。
だから、話が噛み合わなくて、呆れられてしまう。
何度も聞き返して、呆れられてしまう。
何をやるにも気力が起きない。
すぐに疲れるようになった。
もう、何もかもを投げ出してしまいたい。
気持ちのやり場がない。
どんどん”死にたい”が膨れ上がって。
抑えきれなくなりそうで。
もう、今でさえ死んでしまいたいのに。
どうすればいいんだろう。
人にもこんなこと言えない。
陳腐な慰めの言葉はいらない。
陳腐な説教はいらない。
否定されたくない。
軽くあしらわれたくない。
そんなの、わがままかな。

8/16/2024, 8:01:10 AM