小砂音

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#38 「ありがとう」そんな言葉を伝えたかった。その人のことを思い浮かべて、言葉を綴ってみて。

小さな頃から何度も伝えてきた。
だけど、いざ別れの時間を迎えたときに
まったく言い足りなかったと
握った拳に後悔を隠したりした。

四隅の黄ばんだ古い文庫本の匂い、
野花の茎や花弁の湿り気、
柔らかい芯の鉛筆と水彩のタッチ、
わたしを本当に愛おしいと思っていることを
ありありと知らしめてくれる
腕に柔らかく沈んだ歯形の模様。

そういう、ありとあらゆる血の通ったシーンが
今のわたしの心の、
一番に濃い橙をした箇所に残っている。

常々、わたしのことを
ありがとうの言える優しい子だと、
皺を深くしながら伝えてくれた。
時に呪いだったのかと悩んだ時も
ほんの少しはあったけれど、
今は祝福であったと心から言える。

ありがとう。
祖父へ、祖母へ。

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#36 カラフル(2023/5/3 16:36:00)

ぼくは
きみの言葉
あなたの優しさ
アイツの怒り
彼らの訴え
彼女の愛らしさ
いろんな色に染め上げられながら
ぼくという色を形成する

そういうわけだから
ぼくは常々
今この瞬間が
最高にカラフルな人間だったりする

5/3/2023, 1:26:47 PM