時雨 天

Open App

やるせない気持ち




遠くから二人の背中を見つめていた。
お互い見つめ、笑い合う姿。羨ましい限り。
もしかしたら、その隣には自分がいたかもしれないと思う。
地面に落ちていた石に視線を移して、唇を噛み締める。
親友から好きな人ができた、だから応援して欲しいと言われた。
仕方がない頼みだから、引き受けたのだが、これが最悪なことに。
まさか、自分と同じ人を好きになっているとは。信じたくはなかった。
しかし、引き受けてしまったから、応援するしかない。
大事な親友だから、失いたくない。いつも笑顔が眩しい親友。
男女問わず愛され、世界が輝いている勝ち組。
やるせない気持ちが、体の中にどろりと落ちていく感じ。
あの時断ればと、たらればを言ったところで、現実は変わらない。

「あ、一緒に帰ろう‼︎」

自分を見つけた親友は無邪気に笑って、こっちに走ってきた。
来なくていい、来ないで欲しい。来るなと叫びたかった。
でも、できなかった。無理矢理、笑みを作り、思うがままに手を引かれて一緒に帰ることなった。
自分の心にヒビが入っていく。少しずつ、少しずつ――

8/24/2023, 12:31:06 PM