【君と最後に会った日】
別れの挨拶は簡潔だった
君はまさか挨拶されるとは思ってなかったようで
少し驚いたあとに、にこりと笑った
そうだろう、私も少し驚いて、口の端がつり上がった
別れを惜しんでいる訳ではない
二度と会いたくはない存在
一刻も早く消えてほしい存在
世界中の不幸を味わってほしい存在
願わくば、君が最期を迎えるその時に、
世界の誰からも思われることがないように
ああ、胸がいっぱいで声がでない
どす黒い感情が沸き上がり、一度口を開けば止まらなくなりそうだ
だから必死に口を引き締める
だから必死に笑顔を作る
この場から逃げたしたい気持ちを押さえつけ
ぎこちなくだが笑顔をつくった
君は去り
私は残る
君が去っても私の体はもとには戻らない
いままで重くのし掛かっていた君と言う存在が急に消え
その事に不安さえ感じている
私をあんな目にあわせておいて、のうのうとここを去るなんて
許せなかった
償わせたかった
でも、そんなことは出きるはずもなく
私が最後にしたことは別れの挨拶をすること
君はなにも知らないだろう
私がこんな思いを抱えて別れの挨拶をしたこと
私がこれからもこの壊れた体と付き合っていくことを
だから、せめて、別れの挨拶を
ぎこちない笑みだが君に送ろう
私はこれから幸せになるのだと
だから笑って君を送り出すのだと
それは、小さな私の復讐
6/26/2024, 3:04:56 PM