川柳えむ

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 綺麗なもの、美しいものが大嫌いだった。私はそんなものを持っていなかったから。

 親にだって醜いと言われ育った。
 悔しくて悔しくて悔しくて。
 ある日、庭を飛び回るモンシロチョウを見つけた。花に止まり、蜜を吸い始めた。
 自由に飛んで、美しい花に止まるモンシロチョウが憎かった。
 花ごと毟り取り、モンシロチョウを捕まえた。そして、その綺麗な羽も毟り取った。
 ――美しいものは全て破壊してやる。
 綺麗に整えられた庭を荒らした。
 親には怒られ呆れられ、冷たく何も無い部屋に閉じ込められた。

 必要最低限の生活をしていた。
 それなのに。
「君は綺麗だ」
 そんなことを言う男が現れた。
 そんなことないと伝えても、それを認めない。諦めず、私に伝えてくる。
 じゃあ、もし、私が綺麗なものだとしたら?
 ――私自身も壊さなくちゃ。
 あの日殺したモンシロチョウのように。


『モンシロチョウ』

5/10/2024, 10:27:18 PM