一ノ瀬

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 夕日が差し込む、放課後の教室が好きだ。そこにいる先輩はもっと好きだ。立っているだけで他の何よりも絵になる。この光景をそっくりそのまま水彩画にでもしたら何十億の価値になることだろう。僕に絵心がないのが残念でならない。
 机に軽く腰掛ける先輩が「夕焼けって寂しいのにあったかいよね。不思議」と笑う。僕はそれに生返事をしながら、先輩のことをじっと眺める。
 柔らかな光を背負う先輩の顔は、逆光になっていて、薄暗い影が落ちている。それがなんだか後光みたいで出来すぎていると思った。彫刻にしても映える人だ。神様を象ったような。きっと値段がつけられないくらいの価値になる。
「今日の君はぼんやりしているね。何を見てるの?」
 先輩が首を傾げてそう言った。「美術品の先輩を見ているんです」と僕が言うと、「蝋人形になる予定はないよ」と先輩は笑う。なるほど、その手もあったか。

1/25/2026, 5:44:08 AM