『大切な想い出』
ふ、と窓を見て昔を思い出す。
凄く幸せだった日のこと。
もちろん、今は十分幸せだ。結婚して、大好きで一生をかけて守りたい夫がいる。
だからこそなのか、でもなのか、あの時に未だ執着している理由が私には分からない。自分のことなのに。
私には、いつまでも捨てられないものがあって、
それは物でも感情でもある。
初めて付き合った彼から一年目の記念日に貰った、可愛いネックレス。
別れた日に、捨てようと思った。
こんなもの、捨てて忘れようと思った。
でも、思い出すのは幸せな日々ばかり。
どうして私たちはだめになってしまったんだろうって思うくらい、幸せなことばかりで。
そのネックレスを見ると、泣きそうになる。
喧嘩別れじゃなく、ちゃんと話し合って決めた別れ。喧嘩なんてしたことないけれど、年を重ねていくごとに少しずつ見えてきた、合わないズレ。
このままではお互い不幸になると思った。
今はまだ良くても。そういう思いだった。
お互いが。
別れたときはまだ好きだった。
たくさん泣いた。君も泣いたと言っていた。
今は、新しく恋をして、とても大切で大好きな夫がいる。結婚して二人で楽しく幸せに生きている。
私の夫になった人は、昔の私の恋を忘れさせようとはしなかった。
「君が僕のことを好きなのはとても伝わっているし分かるから、君の好きなようにしたら良い」
と言われた。
実際、この想いは確実に過去だ。
夫がとても大好きだし、惜しみ無く愛を伝えている。
初めて付き合った彼は、子宝に恵まれて親子3人で幸せに暮らしているそうだ。
私はただ、少しだけ初めてした恋を忘れられないでいる。初めて貰ったプレゼントを、捨てられないでいる。
お題:《いつまでも捨てられないもの》
8/17/2023, 1:58:16 PM