霜月 朔(創作)

Open App

力を込めて


誰も居ない部屋。
薄明かりの中、
私は私に問い問い掛ける。
「何故、貴様は生きるのか?」
答えの見つからない問い。
冷たい風が心を凍らせる。

嘗て、大切な人と共に、
死地へと向かい、
絶望の闇を切り裂き、
背中を護り合った。

護るべき人を、
絶望から救い出し、
震えていた身体を、
強く抱き締めた。

だが、今やその想い出は、
遠い過去の幻影。
過ぎ去った日々が、胸を締め付け、
使命の鎖が私に重く伸し掛る。
命の重みに押し潰され、
生きる価値さえ見失う。

力を込めて、
絡み付く未練の鎖を断ち切る。
そして、静かに悪夢の中へ、
静かに静かに、沈んでいく。

…それでも。
愛しい君だけは、幸せである事を、
そっと願いながら。

10/7/2024, 6:43:10 PM