作家志望の高校生

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僕の家は、少しだけ変わっている。家庭環境がどうだとか、間取りがどうだとかいった話ではない。少しばかり、置いてあるものが変わっているのだ。
僕は昔から寂しがりで、常に人の温もりを求めていたらしい。記憶も残っていないような、物心がつく前の話でも、大抵、誰かに抱っこを求めている。
そんな寂しがりな僕は、よくいる男の子のような趣味はあまり育たなかった。かっこいいロボットに憧れたり、カラフルなブロックで銃を作ったりするような趣味は、僕の心にそこまで響かなかったのだ。
代わりに僕が熱中したのが、人形遊びだった。初めは、人の温もりに代えるように、可愛らしく、柔らかく、温かなぬいぐるみから始まった。いつの間にか僕の部屋はぬいぐるみで埋め尽くされ、初めて買った一人用のベッドも可愛らしいパステルカラーのものだった。
中学2年生の時だっただろうか。僕に転機が訪れた。ぼんやり眺めていた動画サイトで、ある作家に出会った。その人は人形作家で、音楽も解説も無く、ひたすら人形作りの映像だけを投稿していた。初めはのっぺらぼうのようだった球体関節人形のヘッドに、アイホールが空き、可愛らしい顔がメイクされ、最後に、うるりとした樹脂製の瞳を嵌め込まれる。途端に人形は魂を宿したかのように生き生きとした表情をして、綺麗な服で着飾って、可愛らしい写真をたくさん収めてもらう。僕は、人形の世界にどっぷり浸かっていった。自分で人形を自作し、ネットオークションでこれまでの貯金を使い果たすほど人形やら用品やらを買い漁り、充実した日々を送っていたのだ。
初めて参加したドールイベントの日、僕の人生はまた変わった。僕の愛した人形のように、滑らかな肌と長い睫毛、潤んだ瞳とぷっくりとした唇を持つ、天使のように綺麗な男の子だった。
彼と僕は、人形を接点にすぐに仲良くなれた。元々、可愛らしいドールを好む男性が少ないのもあって、意気投合の速度は異常なまでに早かっただろう。
それから、僕にはもう一つの趣味ができた。人形を着飾らせるように、彼を美しく飾っていく。元々見た目のいい彼は、どんな服を、どんなふうに着せてもよく似合った。
ぬいぐるみも、ドールも、彼も。全部そうだった。僕は、依存心が強いらしい。気に入ったものはずっと側に置きたい、離したくない。いつまでも綺麗に飾って、自分の部屋で眺めていたい。
そんな思いが溢れた今日、僕は僕の部屋に、蜘蛛の巣のようにリボンや毛布でデコレーションされた、甘ったるいまでに可愛らしい部屋に、彼を誘い込んだ。

テーマ:溢れる気持ち

2/6/2026, 7:27:59 AM