─繊細な花─
ある村の伝説に、『繊細な花』と言うのがあった。
その花は見つけることが難しく、花が咲くのは満月の夜だけ。
そして触るとすぐに枯れてしまう、とても珍しい花だった。
珍しい花を周りに見せたい。そんな衝動を沸き立たせる花。
花が枯れてしまうのは、心が綺麗じゃないから。そんな噂も耳にする。
そんな珍しい花を求めて、冒険者達が探しに行くことが多かった。
しかし帰ってきた者は少なく、大半は餓死したり、道に迷ってしまう人が多発した。
その為、数十年程その噂は聞かなかったのだが...。
ある1人の男が、その伝説を耳にした。
男は興味が湧き、準備を済ませ、その花を探して回った。
村の人々は「どうせ戻って来ないのだろう。」
そう思っていた。しかし違った。
男は帰ってきたのだ。片手に花を持って。
男は言った。『我は心が綺麗である。この花はそれを証明する。』
村の人々はそれを信じ、男を崇めた。
村の者は信じきっていた。それが偽物だと疑わず。
言葉の力は偉大である。
人を救うことが出来る。人を殺すことも出来る。
人を騙すことも、可能である。
言葉は誰もが持っている、一番危なく、一番痛い凶器である。
6/26/2023, 6:53:33 AM