霜月 朔(創作)

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叶わぬ夢




凍える夜に、独り。
記憶の海を彷徨う。
壊れた想い出は、
硝子の破片のように、
美しくも、冷たくて。

崩れ落ちた星の欠片を
そっと掌に掬ってみても、
指の隙間をすり抜け、
夜の闇へと溶けていく。

あの頃の光は遠すぎて、
どんなに手を伸ばしても、
決して、届かなくて。
想い出だけが胸を灼き、
じわりと痛みを残していく。

歩き慣れた筈の道も、
住み慣れたこの街も、
君が隣に居ない、
ただ、それだけで、
まるで作り物の景色みたいなんだ。

擦れ違う影に、
あの頃の君の面影を探しては、
何度も足を止めてしまう。
君が微笑んでくれる事は、
もう、ありはしないというのに。

赦されぬと知りながら、
それでも願ってしまう。
君の名を呼べば、
応えてくれる日々を、
もう一度だけ、と。

けれど――
叶わぬ夢ならば、
いっそ消えてしまえばいいのに。
それすら出来ずに、
私はただ、まだ。
君を想っているんだ。

3/18/2025, 9:01:52 AM