居間の戸を開けて縁側に寄ると
櫻の木が頬紅ように愛らしい花と蕾をつけ
春が来たとそう謳っていた
「やっと咲いたね」
私より年が下で在るのに
背は幾分か髙く
顔付きは幼さを残して
其のくせに私より大人びてる
まだ口吻さえしてない恋人が云う
「そうで御座いますね」
「君は藤より櫻を好いてるって聞いて少し可笑しく思ったけどとても綺麗な花だね」
「えぇそうでしょう?櫻は散った時が更に美しく御座います。」
「其れに君に似てるよ。あの色が少し照れてるときの君に似てる。あ、ほら。」
櫻散る皐月。貴方は共に、
(朧の夜月 桜散る)
4/17/2023, 10:28:04 AM