歓声が鳴り響いている。
試合は0対0のまま延長戦に突入し、残り時間はあと5分。
これがきっと最後のチャンスだ。
「お前に、このキックを託したい」
突然、キャプテンからボールを手渡される。俺は驚いて、
「ここはキャプテンが蹴るべき場面です」
と固辞する。チームの精神的支柱は、間違いなくキャプテンなのだ。
「俺はもう限界を超えている。今、一番動けるのはお前だ」
その瞬間、キャプテンの足が、ガタガタと揺れていることに気づいた。もはや、気力だけで立っているようだった。
「でも……」
俺は唇をかみしめる。
「上手くいかなくたっていい。きっと、お前がダメなら誰がやっても失敗する。今は、お前に任せたいんだ」
そう言って真っ直ぐに俺を見つめるキャプテンの視線を受けて、俺の闘志に火が付いた。
「俺、やります。見ててください」
俺がやるしかない。もう心に迷いはなかった。俺は、ペナルティーエリアへと足を踏み出したのだった。
8/9/2024, 9:20:50 PM