思い出すのは、寝つきの悪かった日々のこと。
子供の頃、布団にくるまりながら眠れる気配のないまなこをじっと抑えつけて、外の風の音を聴いていたときのこと。親に隠れてゲームボーイをしていたときのこと。
学生の頃、面白くもない深夜ラジオを垂れ流しながら真っ白なノートのページを眺めていたときのこと。そっと抜け出して深夜徘徊を繰り返していたときのこと。
青年の頃、夜に眠ることを諦めて明け方まで顔も知らない誰かとチャットしていたときのこと。そうしてこの時間をせめてなにか建設的なことに使わなければと、静かに小説を書き始めたときのこと。
今は違う。
心は凪のように静かでいつだってすぐに眠りにつくことができる。あんなに波打っていた創作意欲も乾いて心の底でシミになっている。目の前の大切な人だけが、今は愛おしい。
かつてのような青臭くて瑞々しいことばを紡ぐことは、もうきっとない。
#眠りにつく前に
11/2/2024, 3:01:43 PM