「恋なんていつかは終わるものだから」
失恋した友達に、
よく知ったような顔をしてそういう慰め方をする
友達、
それも自分は恋人がいる友達ほど
信じていけないものはない。
わたしの恋がお前の恋と同じだと思うなよと言いたい。
あんたは元々恋愛感情が自然にあって
しかも
異性が好きで
誰にも文句を言われたことがないくせに。
自分に恋愛感情があるかもわからず
誰かに触れることも苦手で
しかも同姓が好きなことにようやく気づいて、
奇跡みたいに付き合った相手と別れて
死ぬほど泣いて何が悪い。
もう2度と巡り会えないかもしれない相手に
「やっぱり無理だった」とか言われてみろよ
と思う。
飛びかかりそうなくらいに腹が立ったが
今のわたしには
こいつくらいしか呼び出せる奴がいない。
「何、そのひどい顔。ふいたら」
ティッシュの箱を投げてよこす、性格の悪さ。
「公園で別れ話して、土下座して、そこから立ち上がれなくて帰れないあんたを助けに来た友達にする顔じゃないでしょうよ、それ」
相変わらず口がへらない奴だ。
したから睨みつけるように見たら、
夕日の逆光で、ものすごく綺麗なシルエットで立ってやがった。
容赦がない。
そして容赦がないところが、
こいつの友達としての価値だ。
もう一回大声で泣きわめいても
動揺もせずに、まだ逆光のシルエットのまま、紙のタバコを吸っている。
本当に腹が立つ、美しさだ。
「さあ帰ろう」
1/24/2023, 10:19:18 AM