花が咲いていた。よく権力者がいるところを見かける、そんな場所で咲いていた。
花は生えない土地だった。というより生きているもの自体をあまり見かけないような場所だ。
住人はいるけれど、全員が自分の意思をなくした人形に成り果てていて。それは到底『生きている』と称することは難しいように感じていた。
花は生えてない。木々もない。動物どころか虫さえも見かけられたらラッキーレベルの希少性だった。
それだからきっと花を生やすのも大変だったのかもしれない。この世界に来た迷い子を全員意思のない人形にしてしまう彼女が甲斐甲斐しく花を育てる意味がよくわからないけれど。
キレイな花だなと思いつつ、僕は広場にいくためにその場所を離れた。
花が咲いていた。
ボクが頑張ってお世話した花だった。
この世界には花とか木々がない。それは偉い人の趣味というよりはこの世界を創造する時にそこまで手が回らなかったらしい。
だから植物の面はボク等に一存されている。育ててもいいし、育てなくてもいい。個人の自由ってやつだ。
でも、花を育てるような土地も、環境もなかった。
綺麗な花を育てようと思ったら毎日毎日必ずしっかり水を上げて、日の光をずっと当たらないように調節して………………と、やることが多い。
でも頑張った結果が出た。花が咲いていたのだから。
頑張って良かった、とボクは微笑んだ。
7/23/2024, 2:02:36 PM