たかなめんたい

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『過ぎ去った日々』

部屋の片隅にある段ボール箱を整理していたら、随分と昔に使っていた手帳が出てきた。パラパラとページをめくると、そこには当時の自分が何に悩み、何に喜んでいたのかが、拙い字で書き殴られていた。テストの点数が悪くて落ち込んだ日のこと、友人と些細なことで喧嘩をして口を利かなかった一週間。あるいは、帰り道に見つけた野良猫が人懐っこくて嬉しかったという、他愛のない日常の記録。

当時の自分にとっては、その一つひとつが世界のすべてだったのだと思う。特に悩みを綴ったページからは、ヒリヒリとした焦燥感すら伝わってくるようだった。けれど、何年も経った今、すっかり色褪せたインクの文字を追っていると、不思議と胸の奥が温かくなる。あんなにも深刻に思い詰めていた出来事が、今となってはひどくちっぽけで、どこか愛おしいものに感じられるのだ。

「ああ、こんなこともあったな」と、思わず口角が上がる。あの頃の私が必死に生きていた不器用な日々は、今の私を形作るための大切なピースだったのだろう。過ぎ去ってしまった時間は決して取り戻すことはできないけれど、記憶の底で優しく発酵し、今を生きる活力へと変わっていく。

窓の外に目をやると、いつもの見慣れた景色が広がっている。特別なことは何もない、ありふれた今日の連続。それでも、いつかは今も過去になるから、そのとき思い返して、くすりと笑えるような日々を過ごしていたい。

3/9/2026, 2:50:25 PM