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no.16:『君と見た虹』

七色絹地の帯締めて
朱塗りの雪下駄 黒くして
路面電車の窓際に
立っていらした 娘さん

外国生まれの傘を持ち
さっととりだす手巾には
金糸の刺繍 薔薇の園

電車の外は雪景色
急ブレーキで
よろめく 娘さん
飢えたひとびと眺めては
床の羽目板 数えるように
まつ毛を伏せた 宵の如月

君想へばこそ 我忘るべからず


……祖父の日記はこの頁で終わっていました。後の頁はすべて破り捨てられています。いまやその内容を知る者は誰もいません。

2/22/2025, 11:17:16 AM